時代を読み解くキーワード10、「日米同盟」

 

1.日米同盟という言葉

 

「日米同盟」という言葉が使われだしたのはつい最近だと思う。たしか小泉政権時代からではないかと思う。それまでは日米安保条約の下の「日米関係」という言い方をしていたと思う。それがいつの間にか「日米同盟」という言葉に取って代わられた。これには相当意図的であると考えられる。つまり「日米関係」は抜き差しならない「同盟関係」「運命共同体」であると国民に思い込ませるための作為であり、「同盟」という言葉を見るといかにも対等な関係であると思わせる作為であると思われる。

日米安保条約を読めばわかるとおり、どちらか一方が条約の解消を通達すれば、簡単に解消できるのだ。

 

2.ご主人様と奴隷、ジャイアンとスネオの関係

 

 以下、「ジャイアンとスネオ」の関係は、「本当は憲法より大切な日米地位協定入門」のあとがきにある内容です。

 日米関係は、人気アニメ「ドラえもん」に出てくる「ジャイアンとスネオ」の関係に例えられる。大柄で喧嘩も強く典型的なガキ大将のジャイアンにインテリ少年のようなスネオはべったりくっついている。(スネオは喧嘩が弱いが、小金持ちの家庭の坊ちゃんで、高価なおもちゃをたくさん持っている。ジャイアンに理不尽な要求をされたら、高価なおもちゃをすぐに差し出してしまう。)スネオはジャイアンの言いなり。主人公ののび太をジャイアンがいじめていても黙って見ているだけ。それどころかいじめに手を貸すこともある。いじめっ子のそばにいれば自分はいじめられない。いじめる側にいれば自分は安心、そんな計算が働いている。ジャイアンの不条理な要求、横暴な態度、暴力の前に奴隷のようにひれ伏すスネオは日米関係の日本の姿だ。しかも、ほかならぬ日本自身が、そんな自虐的な表現で日米関係を描いているのが残念でならない。独善的で横暴な態度や、傍若無人で乱暴な行為、暴力に対しては毅然と立ち向かう。是々非々で論じ合う、悪いことは悪いといえる、嫌な事は嫌だとはっきり言い合える、スネオにはそんな勇気を持ってほしいと思う。(ドラえもんをみていると、誰もがスネオに対して、そのように思うのではないだろうか?)

 

日米関係は言うまでもなく、対等な関係ではない。よく言えば「対米従属」、本当は「対米隷属」つまりご主人様と奴隷の関係なのだ。日本人は敗戦後、米国の支配の下、唯々諾々と米国のいいなりになってきた。日本人は戦前、天皇制を頂点とした「お上」に対して「奴隷」であった。すなわち「奴隷根性」が染み付いているのだ。日本人に真の独立心、自立心が芽生え、米国との関係を対等にしない限り日本の未来はない。現実の日本は「独立国」でも「主権国家」でも「法治国家」でもない。このように考えている識者は数多くいるし、私はそういう人は信頼できる。最後に参考文献として上げておきます。

しかし現在の政治家、官僚、財界、マスコミ、学界の主流派は「対米隷属」である。元外務省の岡崎久彦は「アングロサクソンについていけば、絶対大丈夫」と信じられないことを言っている。「てめえは人間としての誇りがないのか?」と言いたい。とんでもない「奴隷根性」である。強い奴の腰巾着−奴隷になっていれば自分は安泰とでも思っているのか。

奴隷になっているお陰で、沖縄を中心に国民の生命と財産、国土は常に危機に曝されている。

 

3.アメリカという国の素性

 

 ご主人様の国アメリカはWASP(ホワイト、アングロサクソン、プロテスタント)と呼ばれる人たちが支配している。そもそも、ヨーロッパから渡ってきたアングロサクソンが、アメリカ原住民から土地と資源を略奪し、奴隷となることを拒否した原住民を虐殺し、黒人を奴隷としてこき使いながら建設した国家である。いわば強盗殺人を犯した犯人が自分たちに都合のいい法律を作ってできたような国家である。実に素性の悪い国家である。

その根本思想は

「強者(勝者)は弱者(敗者)を支配できる。弱者は強者に従い、自分たちの所有物を強者に提供するのは当然である。」

「奴隷がいなければ、我々白人の自由を確保できない。」

というものである。これはキリスト教と矛盾しないのである。

 

さらにアメリカは軍産複合体が実権を握っており、1015年に一度は大きな戦争を起こさなければ国自体が成り立たない構造になってしまった。キューバ危機の時の「ノースウッド作戦」、ベトナムの「トンキン湾事件」、そして「911」と戦争のためなら自作自演も平気でやる国なのだ。

 

4.アメリカの「新植民地主義、新帝国主義の時代」、アングロサクソン流資本主義

 

 マレーシアの元首相マハティールはこの辺をよく見抜いている。TPPに反対するコメントとして次のように言っている。

TPPはマレーシアのような小さな国を植民地化するための米国の企てに過ぎない。米国は我々に対して、中国抜きの経済圏の一部になるよう求めている。」

 

 また彼は首相当時、「アングロサクソン流資本主義はアジアにはなじまない。アジアにはアジアの生き方がある。」と言って、ASEAN設立に尽力した。彼のような見識を持つアジアの指導者はどれだけいるだろうか?

 

グローバリズム、グローバルスタンダードとは、アメリカンスタンダードであって、アメリカによってアングロサクソン流資本主義(弱肉強食の世界で、共生、共存共栄、共同体、コミュニティの考えがまるでない。)を全世界に押し付けているに過ぎない。特にこの傾向が強まったのは、1980年代、レーガン、サッチャーの時代からである。日本においては、中曽根から始まり、小泉、安倍に至る系譜はこれの全面受け入れである。この頃から資本主義は大きく変質していく。

 

チャップリンのモダンタイムスの世界に始まって、疎外された労働から解放されるため、労働者は徐々に権利を勝ち取っていった。それなりの生活が送れるようになったのが1960年代。1970年代はまだその余韻があった。資本主義陣営は、共産主義に対抗するため、労働者の権利を少しずつ認め、共産主義に走らないように労働者の地位を高めてきた。それが60年代、70年代の「一億総中流」意識であったのではないか。80年代から新自由主義の傾向が強まり、冷戦構造の終結をもってこれに拍車がかかった。冷戦構造の終結は、「資本主義」の勝利を意味した。図に乗った「資本主義」は、一層新自由主義の傾向を強め、80年代以降、約30年間でこの体制が完成しつつある。今日の貧困、格差社会、派遣、非正規雇用、ブラック企業、うつ病、過労死という形で現れている。営々と築き上げてきた労働者の権利はいとも簡単に剥奪されていった。

 

5.終戦のエンペラー

 

さとるさんご指摘のように「敗戦のエンペラー」が正しい。

何も知らない若い人があの映画を見たら、「マッカーサーも昭和天皇も意外といい人じゃん。あの人たちが今日の日本を築いたのか。」と思ってしまうかも知れない。日本が敗戦の受け入れを遅らせたのは、「天皇制を中心にした国体の護持」の言質をアメリカから得るまで引き伸ばしたためではないか。そもそも勝ち目のない戦争に突き進んだのであるから、いつ敗戦を認めてもおかしくない。最大のきっかけは19447月のサイパン陥落ではなかったか。サイパンからB29が飛び立つことにより、ほぼ日本全土の爆撃が可能となった。この時白旗を上げていたら、東京大空襲に代表される各地の空襲も、沖縄の地上戦も、広島、長崎の原爆もなかったのである。当時の戦争指導者の罪は二重三重の意味で深い。

 

 今日の対米隷属は明らかに、マッカーサー、昭和天皇会見から始まっている。

昭和天皇はone of A級戦犯としてマッカーサーと「ボス交」を行ったのではないか。二人だけの会見は10回以上行われている。「天皇制を護持して戦後日本を統治する」という両者の思惑が合致したのである。天皇制護持の見返りに「沖縄を差し出す」「日本国内に米軍基地を自由に置く」ことを約束したことが明らかになっている。すなわち昭和天皇は、国土をさしだし、日本国民を危機に晒すことによって、自ら生き延びたのである。

 

 2006年、「富田メモ」なるものが新聞にスクープされ、昭和天皇は靖国神社にA級戦犯が合祀されたことへの不快感を示したことが明らかにされた。以来靖国神社には死ぬまで参拝しなかった。このことをどう受け取るか意見の分かれるところである。昭和天皇はA級戦犯に全ての罪をかぶってもらい、すなわち昭和天皇は免罪され、戦争責任問題に蓋をして永久に葬り去ってしまいたかったのかもしれない。靖国神社のA級戦犯合祀はそこをクローズアップされ、美化する意味もあるので、不快感を示したとも考えられる。

 

6.対米従属という宿痾

「対米従属という宿痾」という本がある。鳩山由紀夫x孫崎享x植草一秀

実に面白い組み合わせの3人による鼎談である。

 

鳩山由紀夫氏は初の民主党政権の総理大臣。掲げた理念は素晴らしかったと思う。「普天間基地の県外、国外移転」「東アジア共同体の創設」しかしこの二つがアメリカの虎の尾を踏むことになる。小沢一郎―鳩山由紀夫ラインは、アメリカの意図をくんだ、あるいはアメリカの指示による、自民党、官僚、司法、マスコミから理不尽な総攻撃を受け、あえなく撃沈してしまう。この本の中でマスコミには絶対出てこない鋭い指摘を行っています。

 

孫崎享氏は元外交官。「戦後史の正体」などのベストセラーを数多く出し、新たな視点の問題提起を行って、注目を集めている。しかしNHKでの出演をきっかけに自民党から攻撃を受ける。自民党はNHKに圧力をかけ、NHK出演をさせないよう、言論弾圧を行っている。

 

植草一秀氏は元大蔵事務官、元早稲田大学教授。小泉―竹中路線を厳しく批判してきた。小泉―竹中批判はアメリカ批判でもある。小泉政権時代の野党民主党から、民主党が政権を取った暁には財務大臣をお願いしたいと依頼されていた人物である。ところが電車の中での痴漢容疑で2度も捕まった。私は「あ、やられた」と即座に思った。痴漢冤罪事件でっち上げなど権力にとっては簡単である。被害女性(婦人警官でも良い)と目撃者が2〜3人がいればいい。その後、被害女性も目撃者も表に出ることはない。植草氏は酒が好きで泥酔することもあったらしい。泥酔している時にやられたらしい。

小泉―竹中路線華やかなりし頃、これを批判した多くの学者、評論家、ジャーナリストは忽然とテレビから姿を消した。石井紘基暗殺事件もあった。

 

 本の内容についてはまたまとめます。

 

 

 

 

参考文献

「対米従属という宿痾」鳩山由紀夫x孫崎享x植草一秀

「さらば日米同盟」天樹直人

「アングロサクソンは人間を不幸にする」ビル・トッテン

「アメリカはどれほどひどい国か」日下公人x高山正之(注:この人たちは保守の論客)

「独立国日本のために−脱アメリカだけが日本を救う」森田実

「日本の独立」「日本の再生」植草一秀

「日米地位協定入門」前泊博盛

「戦後史の正体」「日米同盟の正体」「アメリカに潰された政治家たち」孫崎享

「安倍改憲政権の正体」斎藤貴男

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