トイレのないマンション

 今では誰でも言っている「トイレのないマンション」、原発のことだ。しかし、誰が言い出したかはあまり知られていない。原子力発電所を「トイレのないマンション」と名づけたのは物理学者で哲学者の武谷三男氏(1911年〜2000年)である。

最初、「便所のないマンション」と言ったところ、編集者が便所ではあまり表現が良くないのでトイレに変えたらどうかと言われた。武谷氏がそれでもいいよと言って決まったらしい。

彼は数十年前から、原発は猛毒で膨大な粗大ゴミになることを予言している。人類は猛毒な放射性廃棄物を処理する技術を持っていない。この技術がない以上、人類は原発を手がけるべきではないと指摘している。

 原発の寿命はせいぜい数十年単位。そこから出た膨大で猛毒な放射性廃棄物は十万年単位で厳重管理しなければならない。ホモサピエンスが誕生したのが20万年前。人類にとって有史と言われているのは数千年単位。今から数百年後、数千年後、人類が存在しているかどうかわからないのに。放射性廃棄物の厳重管理を要する時間は、桁違いに大きいのだ。

例えてみれば、誕生間もないホモサピエンスが意図的に作り出した猛毒なゴミを、現在生きている私たちが膨大なコストと

労力をかけて厳重管理をしなければならないということだ。扱いを間違えると人類が絶滅するほどの猛毒を厳重管理しなければならない。現在の私たちは、「私たちの祖先はなんてぇことをしてくれたのだ。」と言って恨むに違いない。

私たちは私たちの子孫からこのように恨まれるのだ。

何とも不条理な話だ。

 

参考文献:武谷三男「弁証法の諸問題」

         「罪作りな科学」

         「科学大予言」

     小出裕章「原発のウソ」

         「原発はいらない」

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