「終戦のエンペラー」を観て




 街中のお年寄りが姿を消した。そしてこのシネマイオンに「終戦のエンペラー」を観るために集っていました。いつもはこの映画館では2〜3割程度の客の入りなのに、今日は7〜8割の入りでした。私の特別指定席となっている「D8」席は、いつもは前後左右空席でゆっくりくつろぎながら安眠できるのですが、今日はそうとはいかないぞっと。というわけで、久々に途中一睡もしないで映画を観賞しました。


 ネタばらしから話しますが、敗戦後マッカーサーの日本占領政策の一環として、天皇の戦争責任を問わずに東京裁判を行うために、部下に10日間で天皇の無罪を証明しろと命じた映画でした。当時アメリカ議会では天皇を戦争責任者として処刑しろとの世論でしたが、次期大統領を目論んでいたマッカーサーは日本の占領政策を失敗するわけにはいきませんでした。占領軍としてではなく、解放軍としてのイメージで占領政策を成功させようとしていたのです。

 アメリカ人には日本の政治機構、「議会」が有ってその上に「王」が居てそれが「生き神様」であるという機構が理解できなかったのです。(私もそうですけどね。)とりあえず、この「生き神様」を利用して解放イメージの占領政策をとることにしていたようです。一歩間違えれば日本が共産主義化してしまうのが一番のおそれだったようで、結果、「内閣」と「軍部」が戦争責任を問われ東京裁判で戦犯として処刑され、「天皇」は無罪放免となった訳です。

 天皇が無罪(東京裁判にかけられなかった)となった理由としては、@開戦時にはっきりしたことを言わなかった。(明治天皇の唄を詠んだ。)A無条件降伏は天皇の平和主義の表れとして行われた。(玉音放送レコード盤をめぐり軍部が皇居に攻め入った。)というものでした。

 映画としては、このことにより占領政策は成功したが、残念ながらマッカーサーは次期大統領にはなれなかった。というものでした。


 なんだ、これだけかよ。天皇の赤子として戦い・死んでいった人民のことは語られていないではないか。「天皇陛下万歳」と言って玉砕した兵士は皆騙されていたわけだ.。・・・・・・・・ん。誰に騙されていたんだ?

 私としては、天皇が無罪であろうが、有罪であろうが、そんなことはどうでもいいけれども、天皇が単なる象徴であったことが見えてきた。「財界」と「軍部」による 「大日本帝国」が自らの利益のために天皇制を担ぎ出し国民を欺いてきたわけだ。考えてみれば明治維新の時も、天皇の軍隊ではなく、天皇を担ぎ出した軍隊が勝利したのではないか。軍事力を持たない権力者なんてあり得ない。騙されて死んでいった人達や戦争で人生を持てあそばれた方々は、いったい誰を恨めばいいのでしょうか?


 映画館に結集したお年寄りたちは、いったい何を期待して観に来ていたんだろう?歓声も拍手もないシラケムードでの退場。「領土問題」「防衛軍」「日米同盟」「憲法改悪」等々のなかでみな自己の戦後史の総括をしているのかな?


映画のタイトル「終戦のエンペラー」ではなく「敗戦のエンペラー」が正解でしょうね。どこかの圧力でもあったのですかね。












 



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